七尾旅人/百人組手番外篇 @東心斎橋CONPASS (2014.08.29)

七尾旅人さんが、ゲストアーティストを迎えて即興演奏するイベント「百人組手」。

過去のライブの評判や動画を観て、このイベント面白そうだなとは前から思っていたけれど、東京でしか演らないものだと思っていた。なので今回大阪で開催されると知り、慌てて先約をキャンセルして観に行った。

今回の相手は「Seiho」「砂十島NANI (BOGULTA)」「山本精一」「GUARDIAN ALIEN (from NY)」。NYからのお客さん以外は実に関西らしいメンバー。関東のイベントを関西に持ち込んだというより、関西でしか観られない演奏を演ろうという気持ちが伝わってきて、ライブ前から期待が膨らむ。

ちょっとした勘違いがあって会場に辿り着いたのが開演直前だったのだけれど、既にフロアは満員。数日前に買ったチケットの整理番号が30番台(!)だったので遅れても大丈夫かと思っていたけれど甘かった。MCによると完売とのことで、そりゃ七尾旅人だもん、百人組手だもん、埋まるよな、と納得。

今回の百人組手は、ゲストアーティストと七尾さんが順番にセッションするのではなく、ゲストアーティスト同士でセッションするパターンもあるとのこと。どうなるか予測が付かない展開に期待が更に高まる。

そんな簡単な七尾さんからのMCから七尾さんがソロで演奏して開幕し、まずはSeihoさんへパトンタッチ。

Seiho

Seihoさんは丁寧に音を置く音楽を作るアーティストのイメージがあったので、百人組手?即興で戦えるの?と思ったけれどこれは全くの認識不足。見た目はイケメンなのにライブで鳴らす音楽は武闘派。しかし無骨な強さではなく、スタイリッシュな強さであったところが強く興味を惹いた。飛び道具シンセとしてmicroKORGではなくmicroKORG XLで戦っていたところ、新世代感があったなあ。

ジャンル的に異色だったため、どう聴いていいか分からない人もフロアには結構多かったように見えたけれど、徐々にお客さんを取り込んで盛り上げていったのはさすが。七尾さんやNANIさんと絡みながら一時間くらいSeihoタイムがあったけれど、もっと長くても楽しめたな。きっと。

十島NANI (BOGULTA)

今日のステージ全編で度々顔を出していた、恐らく七尾さんの次に活躍したNANIさん。ドラムだけでBOGULTAと分かるその特徴的な演奏はさすが。かつ、セッションでのかみ合い方もさすが。誰とでもきっちり絡み、ベースやペースを作っていくライブでのユーティリティ性には経験値の高さを感じた。

Seihoさんとのセッションでは展開をリードして異種格闘技戦を成立させた一方、山本さんとのセッションでは、ガッと噛み合い盛り上がった上で「今日は俺等の組手が主役じゃねえよな」と山本さんと目配せし合って短時間で締めたところ、見どころが沢山あったな。

山本精一

最近リリースされた新譜「ファルセット」のイメージで臨んだので、ノイズ全開で戦いはじめたのに驚いてしまった。すっかり忘れていたが、そうだった。このノイズが山本さんだった。

殺意を見せたのは七尾さんとのセッション。ひたすらノイズを場に敷き詰めて七尾さんを追い込んでいく。ノイズのボリュームを上げろ上げろとPAにアピールした結果、七尾さんのボーカルも自らのギターも吹き飛ばしてしまった。凄まじい。

ボーカルとギターの音量も上げろと山本さんはアピールしていたけれど、フロアではノイズに耳をやられる人々が続出していたので、きっとあの音量が「場」の限界だったのだろう。リベンジを味園「大音量地獄」ユニバースで演って欲しい。

GUARDIAN ALIEN

事前知識がなく、どんなアーティストなのか分からなかったGUARDIAN ALIENの二人だったけれど、二人の演奏の時間があったおかげでようやく「どのようなアーティスト」なのかが理解できた。この大阪の濃いメンバーを会わせたいと七尾さんが願ったアーティスト、やっぱり濃い。ドラムのGregのテクニックに異常な程の安定感があり、即興的な展開をしてもまるで音楽が崩れない。安心してサイケデリックな世界に飛び込んでいけた。

言語が異なっても演奏が名刺代わりになったのか、この二人の演奏の後の五人の即興では、山本さんもNANIさんもGUARDIAN ALIENへの攻め方が鋭くなっていった。その結果、即興の熱が高まり続け演奏の密度が頂点に。開演して三時間後にして、遂に場がピークに達した。

アンコール

アンコールはSeihoさんと七尾さんとのセッション。その後、七尾さんがステージ上に残るので観客も残ってしまう状況が続き、何だかんだで結局11時半位まで場が続いた。

開演が7時半なので約4時間。しかしこの時間の長さを全く感じさせなかった。百人組手、ここまでとは。映像では伝わらない、異常な場の盛り上がりがそこにはあった。

久々に「ライブ」を感じたライブだった。また演って欲しいなあ。