2018年の邦楽10枚

2018 年にリリースされた邦楽のアルバムから最高の10枚を選ぶ。今年で9年目。

選出基準

  • 邦楽のみ。国内で(も)活動するアーティストに絞る。
  • 1アーティスト1枚
  • コンピレーション盤は最大1枚。

七尾旅人/Stray Dogs

Stray Dogs

Stray Dogs

とても叙情的なアルバムで、このアルバムの素晴らしさを説明することはとても難しい。

何か特別に耳を惹く新規性があるわけもなく、上辺だけ聴いているといつもの七尾旅人のアルバムだなと思うかもしれない。ただ、アルバムを再生しているうちに、ふと耳に留まったフレーズから急に情景が広がっていき、世界に取り込まれていく瞬間がきっと誰にでもあるだろう。理屈では表現できないけれども、きっと皆そう感じるだろう、そういう確信がある。これはもう魔法としか思えない。

曽我部恵一/There is no place like Tokyo today!

2018年の曽我部さんはサニーデイ・サービスのアルバムから始まり、リミックスアルバム、ベストアルバムと立て続けにリリース、映画の劇伴、曽我部恵一名義でもヒップホップ(!)アルバムをリリースし、もうどれだけ音源出てくるねん状態だったのに、最後の最後に実に「アルバム」らしい最高品質のアルバム「There is no place like Tokyo today!」がリリースされたのには驚くしかない。

曽我部恵一」名義らしい、内向的で自由なサウンドが続く。2018年にリリースされたアルバムの中で、最も無計画だったのが本作だったと想像するけれども、だからこそ曽我部さんらしさを最も感じられるのかもしれない。

Silent Poets/dawn

dawn

dawn

ドコモのオリンピックCMソングの「東京」が5lack名義ではなくて「Silent Poets feat. 5lack」と知ったときの衝撃が懐かしい。実はSilent Poetsのことはすっかり忘れていたのだけれども、この「東京」の衝撃ですっかり記憶が戻ってしまったし、Silent Poetsが12年振りにアルバムをリリースしたと知ったときには、当然聴かなければならないと思った。何故か今聴くべき音楽のような気がした。

低いダブビートとストリングスを駆使するMassive Attackのフォロワーとしてのサウンドは12年前からの延長線なのだけれども、古びることは無い。特筆したいのはD.A.N.の櫻木さんをフィーチャーした「Simple」。12年前から続いていたサウンドと現在のサウンドが交わっていく感覚がたまらなく、ああ、D.A.N.と5lackがSilent Poetsを私の現在に引き戻してくれたのだなと思った。今聴いても普遍な音楽だし、きっと十年後もその時の音楽と共鳴するのだろう。

くるり/ソングライン

取り留めない楽曲の数々だけれども、それが不思議と統一感を保っているアルバム。きっとくるりのムードの一定さによってこの統一感が生まれているのだろう。もしくるりの他の曲がこのアルバムに収録されていたとしても、編曲され「ソングライン」らしい一曲となって収まるだろうなあと思う。充実期だ。

LEO IMAI/VLP

VLP

VLP

バンド「LEO IMAI」としてバンドサウンドを突き進んだ今作。ひたすらに格好良い重低音を鳴らせるバンドをLEO今井の楽曲が巧みに指揮している……というよりは、LEO今井の変態楽曲を安定して演奏できるバンドが完成した、と言うべきか。向井秀徳におけるZAZEN BOYSと同じようなものなのかもしれない。

低く鳴り響くベースとドラムの上で、煌びやかに駆け回るボーカル、ギター、キーボード。骨太のロックバンドサウンドなのに古臭く聞こえないのはLEO今井さんに華があるからなのだろう。

MASS OF THE FERMENTING DREGS/No New World

No New World [FLAKES-192]

No New World [FLAKES-192]

マスドレがやっと帰ってきた!駆け足で突っ走ってしまうマスドレが帰ってきた!

ここまで紆余曲折があった。メンバーが替わり、バンド休止しての宮本さんソロを経て、ちゃんとオルタナティブロックとポップとビートがにゅーんとアクアフレッシュしてるマスドレとしてシーンに戻ってこれたことが何よりも素晴らしい。歓びに満ちたアルバム。

Chara/Baby Bump

Baby Bump(初回限定盤)

Baby Bump(初回限定盤)

Dance Musicを名乗るためだけのビートではなく、床を鳴らしてDanceするためのビートが鳴っている。こんなにもCharaが最先端を突っ走っているとは知らなかった。

ただ何となく今が旬のアーティストをプロデューサーとして呼んできたわけではなく、解り合った上でCharaの楽曲として制作されているのが分かる、トラックとボーカルが抱き締め合っている楽曲群。世界に届くビートの上に乗っかっても、輝き続けるボーカルの存在感。先進性と完成度の高さに感服する。

cero/POLY LIFE MULTI SOUL

POLY LIFE MULTI SOUL (初回盤A)

POLY LIFE MULTI SOUL (初回盤A)

ここまで複雑なリズムとフレーズが連なっていて、それが整然としているわけではないのに「完成度が高い」と思えてしまうところが不思議。

ceroの魅力である、涼やかさと生々しさの融合はそのままに。ずば抜けた傑作だった三年前の「Obscure Ride」を上回る音楽へのアプローチが自然に行われていることに驚きを感じ……ていない自分に、驚く。最早レジェンドの域だ。

Luby Sparks/Luby Sparks

Luby Sparks

Luby Sparks

脈々と受け継がれる日本のシューゲイザーの系譜。その末裔がこのバンド……と言いたくなるところだけれど、音の空気感はむしろUKインディ。2018年版としてアップデートされたサウンドが日本を超えて支持されているのも納得。

長谷川白紙/草木萌動

草木萌動

草木萌動

大事件。美しさとしての高速ビートの上を緩やかに流れるボーカル。草木の芽生えを早回しで見ているかのよう。このバランス感覚は天性のもの。是非ともAphex Twinのように自由にやって欲しい。

過去の10枚

2017年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2017/12/31/140000

2016年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2016/12/25/090000

2015年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2016/01/02/184449

2014年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2014/12/31/132004

2013年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20131231/1388501652

2012年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20130115/1358261719

2011年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20120118/1326889267

2010年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20110411/1302534280