ワイヤレスANCヘッドフォンを体験しよう

ヨドバシでうっかりBose QuietComfort 35 IIを体験してしまってから、ワイヤレスANCヘッドフォンを買わねば!と連日ネットを検索したり店頭で試聴をし続けた結晶の記事。

ワイヤレスANCヘッドフォンをお薦めする音楽環境

  • 屋外、騒がしい場所で音楽を聴く機会が多い
  • 音楽プレイヤーとしてiOS (iPhoneなど) やAndroidのOSを搭載したスマートデバイスをワイヤレスで使っている
  • 良い音で音楽を聴きたい、そのためにはヘッドフォンの煩わしさや出費は許容出来る

上記に当てはまる音楽環境の場合、ワイヤレスANCヘッドフォンはかなりお薦めできる。この記事で紹介する機種は実売三万円台からと、結構いいお値段がしてしまうのだけれど、そのお金をかけるだけの相対的な音質や利便性はある。是非家電量販店などで試聴してみよう。一度体験するとこの値段に相応しい価値があるのは理解できる。なお体験してしまうと猛烈に欲しくなってしまうので、絶対に財布の紐を緩めてはならない事情があるのなら止めた方がいい。

試聴してまず一番に驚かされるのは、ANC (Active Noise Control) の性能だ。ノイズキャンセリング機能を持つヘッドフォンはかなり昔から存在していたけれども、ノイズキャンセリングを有効にした途端に音楽がカサカサシュワシュワしてしまう、音質面で全く使い物にならない印象だった。しかし今のトップブランドのノイズキャンセリング機能は以前とはレベルが大きく違っており、環境音のカット性能がかなり優秀になっている上、音質劣化もかなり軽減されている。ブラインドテストでは機能のオンオフによる音質劣化が区別できないレベルの製品もあると思う(環境音が明らかに増減するので、実際には機能のオンオフは確実に区別できるのだけれど)。

モバイル用途なら外は環境音だらけだし音質に過剰にこだわっても意味がないな、繊細な表現の違いなんて雑音の中じゃ分かりっこないな、と個人的には考えていたのだけれども、ノイズキャンセリング機能がここまで優秀だと話が変わってくる。環境音がここまで軽減できるのなら音質にこだわる価値はあるし、モバイル用途で音質にこだわるならANCの機種を積極的に検討すべき時代になったと思う。

体験しよう

ワイヤレスANCヘッドフォンは機種によって音質も利便性も違うので、(この記事のような)ネットのレビューだけを参考にせず一度体験してみるのが良い。決して安い製品ではないので、交通費をかけてでも家電量販店などに足を運んで試聴しよう。ヨドバシカメラなど店内が喧しい場所で試聴する方が、ノイズキャンセリングの効果を実感しやすいと思う。

なお試聴に出掛ける前に予め、手持ちのスマートデバイスに試聴する予定のヘッドフォン専用アプリをインストールしておくこと。ワイヤレスANCヘッドフォンはスマートデバイスの専用アプリで機能がコントロールできる。アプリがないとノイズキャンセリング機能の有効無効にすら切り替えられない機種も多く、本来の性能を確認できなくなってしまうので、購入を検討するならアプリのインストールは必須だ。店頭で慌ててアプリをダウンロードして電池と時間を無駄にしてしまうのはもったいないので、事前に準備しておこう。iOS用のアプリへのリンクは機種紹介の末尾に書いているので参考に。

機種紹介

2018年12月時点での最新機種から、このジャンルの先駆者であるBoseQuietComfort 35 IIと比較されがちな機種をいくつかピックアップした。なおこのジャンルはマイナーバージョン一つ変わるだけで性能が大きく変わるので、新機種が出たらこちらの内容は参考程度として欲しい。

Bose QuietComfort 35 II

https://www.bose.co.jp/ja_jp/products/headphones/over_ear_headphones/quietcomfort-35-wireless-ii.htmlwww.bose.co.jp

「ワイヤレスANCヘッドフォン」ジャンルで恐らく最も知名度がある機種。飛行機の乗客で大きいヘッドフォンを持ち込んでいる人がいたら大抵この機種だ。他社の機種はこの機種を大なり小なり意識して作られているので、他の機種がお目当てでもまずはベンチマークとしてこの機種を試聴しておくことをお薦めする。

音質:ノイズキャンセリングの利きは最高クラス。ヘッドフォンを耳に装着しただけで周りの環境音が、家の壁一枚挟んだ程度に消える。完全に消えるわけではないけれども、かなり削減されることに驚くと思う。音楽を再生してみると残っていた環境音もほぼかき消され、音楽の世界に浸ることができる。この機種なら屋外で音楽を聴くときでもボリュームを大きくして環境音を無理矢理にかき消していく必要がないのだ。

ただノイズキャンセリングが強いせいか、耳に負担がかかる謎の感覚が発生する。試聴していると何故か耳抜きをしたくなってしまうこの謎の感覚。個人的にはこの感覚は慣れだと思うけれども、この耳に負担がかかる感覚に耐えられず製品を手放している人もいるので、試聴してこの感覚を確認してみて欲しい。

音質はシャープ。ノイズキャンセリングとの相乗効果で静謐な印象を強く受ける。ノイズキャンセリングの有効化による音の劣化も感じられず、フラットだけれども低音にはBoseらしい解像度と迫力が存在している。

機能:シンプル。ノイズキャンセリングの有無と、弱強二段階のノイズキャンセリングが選べる。旧機種ではノイズキャンセリングの無効化ができなかったようだけれども、現行機種はアプリから可能。

他の機種と比べて機能が乏しいので、普段スペックを見比べて製品を選んでいるタイプの人は、価格なりの価値があるのか悩んでしまうと思う。とは言えそもそもヘッドフォンに「機能」があること自体珍しいことなのだけれど……。

音楽の再生やスキップ、音量調整などはハウジング部分のボタンで操作ができる。他の機種にはこういった操作をタッチセンサーでできるものがあるけれど、ボタンとタッチセンサーの操作性は一長一短だ。店頭で操作して自分に合うかどうか確認しよう。

デザイン・フィット感:フィット感は他の機種と比べても最も良い。軽くて、締め付けられる感覚が小さい。見た目はプラスチック感があり、本体にボタンやスイッチがゴテゴテと付いているのはやや安っぽい感じもしなくはないけれど、Boseブランドが好きなら許容出来ると思う。

iOS用のアプリはこちら。

Bose Connect

Bose Connect

  • Bose Corporation
  • Music
  • Free

Sony WH-1000XM3

www.sony.jp

Bose QuietComfort 35 IIの対抗馬。純粋にBoseに対抗できているのはこのSonyの機種だけだと思う。Sonyは昔からノイズキャンセリングのヘッドフォンを出し続けており、技術的にも信頼感がある。

音質:ノイズキャンセリングの利きはBoseと同等かそれ以上だと思う。ノイズキャンセリングによって耳に負担がかかるってくるのも残念ながら同じ。環境音や気圧の状況を感知して、ノイズキャンセリングの最適化ができる機能があるところはこの機種の特徴の一つ。

音質は全体的に解像度が高く、Sonyらしい作り込んだ音が鳴る。BoseよりSonyの音質の方が立体感があるように感じる。個人的にはこのSonyザ・高音質感はあまり好みではないのだけれど、ノイズキャンセリングという凝ったギミックを搭載しているヘッドフォンが鳴らす音としては正しいとも思える。

機能:アプリの機能の豊富さは随一で、ノイズキャンセリングの強弱をスライドバーで段階的に選択できる。環境音のうち人の声だけを優先して取り込むように調整することも可能で、例えば大事なアナウンスを聞き逃さないようにしながら音楽を聴く設定ができる。他にも音のイコライジング、音場の位置の変更など(使うかどうかはさておき)とにかく機能が豊富。

タッチセンサー採用機種であり、本体のボタンもかなり少なくハウジング周りはすっきり。タッチセンサーとアプリからの操作を想定している部分が多い点には賛否がありそうだ。タッチセンサーでの操作は思い通りに反応しない場合があり、ボタンなどで確実に操作したい人には不評だと思う。慣れるとある程度は許容できるか?あと右側ハウジングのタッチセンサーに手を当てるだけで、外音を取り込んで咄嗟のアナウンスに対応できる機能は、確実に動作してくれるし地味に便利だと思った。

デザイン・フィット感:現機種になってやや改善されたけれども、Boseに比べるとヘッドフォンらしいボテッとした野暮ったさがあるのは否めない。プラチナシルバーという軽めの色がカラーバリエーションにあるのはあるのだけれど……この色の購入を検討している人は店頭で実物を確認した方がいい。

ポジティブに表現するなら、Boseのようなプラスチック感はないし、スイッチやボタンが少なくてスッキリした見た目とも言える。Sony愛があれば許せる……かどうかは何とも言えないけれども、悪くはない。最近のSonyのデザインらしいとは言えるかな?

iOS用のアプリはこちら。

Sony | Headphones Connect

Sony | Headphones Connect

  • Sony Video & Sound Products Inc.
  • ユーティリティ
  • 無料

Sennheiser PXC 550

www.sennheiser.co.jp

Bose QuietComfort 35 IIやSony WH-1000XM3と比べてやや値段は張るけれども、Sennheiserらしい高品質さに価値があるヘッドフォン。

音質:モニター系のSennheiser機種らしく、音がナチュラルに鳴る。BoseSonyの音質より解像度が一枚上だと思う。ただノイズキャンセリング機能はBoseSonyと比べてやや弱め。音質を損なわない程度のノイズキャンセリングが搭載されているということか。ノイズキャンセリングによる耳への負担は感じなかったところはメリットと言えるだろう。BoseSonyでなくSennheiserを選ぶとしたらこの音質とノイズキャンセリングのバランスが気に入った場合だと思う。

なおSennheiserのラインナップにはMOMENTUM Wirelessという、圧倒的MOMENTUMサウンドで気持ちよく鳴らしてくれるワイヤレスANCヘッドフォンの機種もある。MOMENTUMが大好きならそちらを検討するのも一つ。

機能:段階的なノイズキャンセリングイコライジングが可能。この音にイコライジングするのは余計な気もするけれど、勿論あって損はない。Sonyと同じように基本操作系はタッチセンサーになっていて、タッチセンサー操作で咄嗟に外部の音を取り込める機能も搭載されている。できる機能はSonyに近いけれども、やや古い機種であるためかSonyに比べて洗練はされていない印象。

デザイン・フィット感:高価格帯のSennheiserらしい格好のよろしい見た目。目立ちはするけれどシャープさがあり、Sennheiserブランドが好きなら気に入ると思う。

iOS用のアプリはこちら。

CapTune

CapTune

Bowers & Wilkins PX

www.bowers-wilkins.jp

Bose QuietComfort 35 IIやSony WH-1000XM3より値段が一万円~二万円程高いので、純粋な比較対象にはならないと思うけれども、高価格帯のワイヤレスANCヘッドフォンとしては選択肢に入ってくる機種だ。

音質:そもそも価格帯が違うので当然なのだけれど、音質は他の機種に比べて抜群に良い。ワイヤレスは音が悪いだなんてこの機種を聴くともう言えない。解像度の細かさと表現力は圧巻で、特に中音域の表現が丁寧で聴きやすく、B&Wなのに良い意味でモニター系っぽくない。ただこれはノイズキャンセリングが無効の場合である。

ノイズキャンセリングを有効にすると露骨に音質が怪しくなる。無効時の音が良すぎるので相対的にそう感じてしまうのか……。ノイズキャンセリング機能をオマケと考えて、普段はノイズキャンセリングを無効にして使う想定ならこれでも良いかもしれないけれど、それならノイズキャンセリング要らないんじゃない?という疑問が浮かんでくる。評価が難しい機種だ。

機能:ノイズキャンセリングの種類を「オフィス」「シティ」「フライト」の三種類から選べる。この選択とは別に人の声だけをどれだけ取り込むかを段階選択できる設定もある。一番ノイズキャンセリングの利きが強い「フライト」の設定だと音質がかなり厳しくなるので、常用するのは「オフィス」や「シティ」になる。しかし「シティ」にしても、環境音のカットはそれなり。

結果的にノイズキャンセリングの強さには過度な期待ができない機種だと思う。日本の都会の屋外環境にはフィットさせ辛い機種、と言えるかもしれない。主に自宅やオフィスなどでより静かに音楽を楽しみたい人が使うべき機種なのだろう。

基本操作系はボタン。ヘッドフォンを頭から外すと自動的に再生が止まり、装着すると音楽が再開される機能がある。体験してみて個人的にはとても便利な機能だと思ったけれども、どうも人によっては動作が安定せず賛否両論のようだ。この機能はアプリでオンオフ可能。

デザイン・フィット感:さすがB&W、デザインの高級感は抜群で愛着が持てると思う。特にゴールドの上品さには一目惚れ注意。フィット感はやや強めなので、試聴で確認してみると良い。

iOS用のアプリはこちら。

Bowers & Wilkins Headphones

Bowers & Wilkins Headphones

  • B&W Group Ltd
  • ユーティリティ
  • 無料

まとめ

ノイズキャンセリングの利きや価格を優先するなら、Bose QuietComfort 35 IIとSony WH-1000XM3が候補、音質を重視するならSennheiser PXC 550とBowers & Wilkins PXが候補になる。

操作系はタッチセンサーのSonySennheiserとボタンのBose、B&Wで使い勝手が分かれるので、店頭で自分に合う操作系かどうかも確認しよう。

BoseSonyは似たタイプであり、総合的には後発のSonyに分があると思うけれども、重視する部分でひっくり返る差だとは思う。また製品の特徴が自分のこだわるポイントと一致するのなら、SennheiserやB&Wは唯一の選択肢になるだろう。