吉村さん、本当に、ありがとうございました。

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本当に残念でしょうがないし悲しい出来事だけれど、それと同時に最後まで「悪い大人の手本」で居続けた吉村さんの生き様に感動がこみ上がってきて、この旅立ちに拍手を送りたいとすら感じてしまっている。ライブが終わった後、ステージに拍手を送り続けるような、そんな感謝の感情が胸の中に沸き起こっている。

最後までバンドマンであり続けて、最後までロックであり続けた。最後の瞬間まで走り続けていた。バンドマンとしてこれ以上の生き様はないだろう。いま振り返っても「こうだったら良かったのに」といった後ろ向きな感情は浮かんでこない。常に全力のパフォーマンスを発揮していた、常にファンと向き合ってくれていた、そんなバンドマンだったからこそ、こちらもすっきり涙を流して悲しむことができている。

寿命なんてどうにもならないこと。自分ではどうにもならない部分に対して悲しむよりも、自分でどうにかなる部分で太い生き様を見せてくれたこと、十分すぎる程に心を熱くさせてくれたことに感謝したいし、感謝することが吉村さんへの餞になると思う。

本当に、ありがとうございました。

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bloodthirsty butchersは常にステージに立ち続け、ファンの手の届く場所に居てくれていた。そのおかげで今も、「あの時のライブを観たら良かったなあ」という後悔の気持ちよりも、「あの時のライブは本当に良かったなあ」という前向きな感情の方を強く持つことができている。

これはZAZEN BOYSとの対バンというビックイベントを最後に観ることができたからかもしれないが、頻繁にライブを演ってくれていたことも理由として大きいと感じている。ツアーでもイベントでも、様々な機会で何度も関西に来てくれて演奏してくれていた。最近butchersのライブないな、ライブまだかな、と心が乾く暇もなかった。

butchersのライブは生で感じてこそのもので、吉村さんの声を生で聴くことはもうできないことは残念だ。しかしながら、過去に何度も観て刷り込まれたライブの断片は今でも色濃く心の中に残っているし、それはいつだって思い出すことができる。いつだって、彼らは味方だ。本当にありがたい。

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bloodthirsty butchersのことは、名盤「korocono」から追い続け、ライブ盤「green on red」でライブの魅力を知ってからライブにも行き始めた程度だけれども、butchersはkorocono以降もその勢いは、全く、全く衰えていなかったことは記しておきたいと思う。

ステージ上ではいつだって、彼らにしか鳴らすことができない最強の轟音を鳴らし続けていた。kocoronoの評価以降、改めてメディアからプッシュされることは少なかったかもしれないし、世間的にkoroconoより評価されるアルバムは生み出せていないけれども、そんな陽の当たらない間にも素晴らしい曲を生み出し続けていた。

もし、これを機会にbutchersを聴こうと思った人には名盤「kocorono」よりも最新のアルバム「NO ALBUM 無題」や「ギタリストを殺さないで」を勧めたい。新しいアルバムの方が一聴して伝わり易いし、そこを入り口として色々なアルバムを聴いていくうちに、自然にkoroconoには辿り着くだろう。

ライブ盤「green on red」も魅力が伝わりやすいのだけれど、廃盤なのが残念だ。

また、4月のライブの日記にも書いているけれど、現在製作しているアルバムはbutchersのもう一つのピークになるポテンシャルを秘めていることも付け加えておく。

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落ち着いて、改めて楽曲を思い出してみる。生きる実感に溢れた歌詞ばかりが浮かんでくる。

今だからこそ、歌詞からまた更に強く感じられるものがあって。まるで曲に魂が乗り移ったかのように耳に頭に胸に響いてくる。ああ、こんなところで生きていたか。めそめそとご冥福を祈っている場合ではなかったな。