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Dirty Projectors@梅田クラブクアトロ (2012.10.11)

NYブルックリン出身のインディーズバンド「Dirty Projectors」のライブに行ってきた。新譜「Swing Lo Magellan」のリリースもまだ記憶に新しいのに早速の来日、しかも来阪ということで本当にありがたい。

Dirty Projectorsはブルックリン勢らしい実験的なバンドの一つだけれど、その中でも、知性・意図的な企みを感じさせる点が特に気に入っている。ライブではスタジオ音源とは一味違った演奏が楽しめるとも聞いていたので、楽しみにしながらクアトロに向かった。


Dirty Projectorsは、フレーズ一つ一つは整っていたりキャッチ―であったりするのだけれど、それらを曲として構成する部分にセオリーを逸脱している点が多い。その結果「乗れそうな雰囲気なのに、実際には簡単に乗れない」「『知っている』印象なのに感覚を裏切ってくる」「何か気になる」という感想を持ってしまうのだけれど、それがライブでもそのまま体験できるのかは不安だった。生演奏するには難度が高過ぎるように思えるからだ。演奏の雑味を楽しむような展開になるのでは、と内心は覚悟していた。

しかしながら、Dirty Projectorsは練度の高い安定した演奏でその不安を解消してくれた。アンバランスにバランスが取れている、安心して不安定を期待できる演奏。バンドの中心人物であるデイヴ・ロングストレスの中には、独自のバランス感覚が備わっていて、その感覚がバンド全体に共有できているのだろう。楽曲面を考慮するにデイヴのワンマンバンドかと想像していたけれど、実際はバンド全員の信頼の上に成り立っているバンドだった。

変拍子のバンドの演奏なんてこれまで何度も観る機会があったし、少々トリッキーな展開であっても演奏者を見ていればリズムを掴める自信が合ったのだけれど、Dirty Projectorsではそんな経験は全く通用しなかった。彼らの演奏には大仰なボディーランゲージが無いので、バンドの空気を読んでリズムに乗ることができない。曲を知らないとあっさりリズムに騙されてしまう。この裏切られる感覚がとても楽しかった。


新譜で歌ものにシフトした影響で、実験的な印象が薄くなったのも良い方向に働いたと思う。ポップネスが強くなったおかげで、バンドの持つ独自性が押しつけがましくなくなった。ハンドクラップしながら笑顔でバンドの演奏と打ち解けることができる感覚。ニヤニヤしながら聴いている観客が多かったのも印象的だった。

なんて書きつつも、この日一番だったのは、前作収録曲のUseful Chamberだけどね。曲の特徴を生かしつつ、変態的に衝撃的にダイナミックで格好良かった。元々静動の振り幅が大きい曲だけれど、ライブにてエモーショナルに演奏されることでその振り幅が更に増大。音楽の波でぐらんぐらんぶらんぶらん揺さぶられて、あんな精神的に犯される体験もなかったわ。


知名度に対してチケットの価格が高かったので、観客の年齢層はやや高め。ライブ前には、これは腕組み地蔵だらけになるのかなと想像していたけれど、観客の反応も良好で楽しい貴重なライブだった。

セットリスト

  • Swing Lo Magellan
  • Offspring Are Blank
  • The Socialites
  • Cannibal Resource
  • Wittenberg IV
  • See What She Seeing
  • No Intention
  • About to Die
  • Just From Chevron
  • Maybe That Was It
  • Gun Has No Trigger
  • Useful Chamber
  • Dance for You
  • Stillness Is the Move
  • Impregnable Question

※終演後にばら撒かれていた足元のセットリストを確認させてもらったもの。