渋さ知らズ@京都磔磔 (2012.09.24)

渋さ知らズには磔磔が似合うわ。

渋さ知らズのライブはイベントで何度も観たことがあったものの、ワンマンは初めて。

そのワンマンは想像以上の世界だった。イベントはほんのお試しライブで、渋さ知らズの本番はワンマンだ。

磔磔は決して広くないライブハウスなのだけれど、そこで二十人弱のメンバーがパフォーマンスするとなると自ずとメンバーと観客との距離も近くなる。特にこの日の磔磔は客席に椅子とテーブルがある構成だったので、もう「京都の老舗居酒屋にバンドが演奏しに来た」みたいな様相。観客との距離が近くなるのは渋さ知らズの特徴だけれど、磔磔のようなライブハウスでこんなに距離が近くなるのは予想外だった。楽しい。

舞台は、一言で言うと、達人たちの悪ふざけ大会。まずアドリブ演奏の応酬が凄まじい。イベントでのライブでもアドリブを利かせるシーンは多々あるけれど、あれは「余所向けのアドリブ」だったのだなあと感じた。ワンマンでのアドリブは「自分が演りたいように演る」というエゴが大っぴらに見えてとても面白かった。出鱈目なアドリブソロを、他のメンバーが煙草片手に笑いながら見守る。演奏者だって観客に鳴って楽しむ、演奏者同士で楽しませ合うようなライブだった。

しかし、そんな内輪な部分が見え隠れするライブでも観客は取り残されない。渋さ知らズの音楽のベースは単純なので簡単にリズムに乗って楽しめるし、楽しめるシーンは舞台のそこらで繰り広げられているので目が飽きることが無い。舞踏観ても良いし、ダンサー観ても良いし、バナナ隊観ても良い。何をしても良い。

「分かりやすく楽しめるし分かりにくく楽しめる」というのが、渋さ知らズの一番の特徴だ。それが存分に提示されたパフォーマンスだった。何も考えずに笑って観ても良い。腕を組んで仁王立ちしても良い。バナナ隊の動きをコピーしても良い。

場の懐が深い。場の空気なんて読まなくて良い。だって、不破さん以外、演奏者すら気を遣っていないんだから。なんだこの空間。フリーでロックだ。

客層はやはりやや高め。街で会っても「この人、バンドなんて興味ないだろうなあ」という風体の方々が集まっていて、渋さ知らズの奥深さ、音楽の奥深さを感じた。渋さ知らズがいれば、まだまだこの世の中だって面白い。