2010年の邦楽10枚

2010年にリリースされた邦楽のアルバムから最高の10枚を選ぶ。
ルールは以下。

  • (表題通り)邦楽のみ。国内で活躍するアーティストに絞る。
  • 1アーティスト1枚
  • サントラ盤・コメディは除く。
  • コンピレーション盤は1枚のみ。
  • シングルは除く
  • 映像作品として販売されていたものに付いてきたCDは対象外

また、なるべく「近いもの」は選ばないようにする。

もう4月で今更なのだけれど、実は選定はもう終わっていて文章を書くのに手間取っていただけ。勿体ないので公開する事にした。

以下、順不同。



SEVEN IDIOTS

SEVEN IDIOTS

オーケストラの楽譜のように緻密にあらゆる音色を配置する。今作、ロックに対してそのようなアプローチを取ったWEGの新作は、ジャンルの壁を飛び越えた、そしてジャンルの定石を破壊する、台風・巨人のような一枚となった。
耳に大量の情報音を一気に叩き込まれる。目の前に浮かぶのは天国と地獄を巡る神話が描かれた紙芝居が、高速に紙を捲られていくさま。手書きのアニメだ。吟遊詩人は2010年に新しい進化を遂げた。


「Les Enfants du Paradis」



Blu-Day(DVD付)

Blu-Day(DVD付)

2010年はやくしまるえつこ単体の活動が目立ったが、最もやくしまるえつこの声を活かしたプロジェクトが今作だ。声優のように声色を使い分けだした彼女の2010年の特徴が特に活かされた一枚である。
やくしまるえつこの喉を一つの「楽器」として扱う事で、その声はよりポップに、よりキャッチーにリスナーに伝わった。変則的なリズムと合わさって生まれたのは、大人が夢見るこどもの世界。


「ファイナルダーリン」



∀

「コラボレーションアルバム」というコンセプトで、各曲それぞれの形で、別のアーティストとコラボレーションした今作。バランス無視でレアトラックが詰まった、例えるならば豪勢なおせち料理
毎日毎日お腹一杯頂ける味付けで、他のアルバムはもう当分不要だ。


「死ぬまでDANCE」



◎≠(マールカイキ)

◎≠(マールカイキ)

ヒップホップ界から突然変異として現れた「あるぱちかぶと」の集大成的ファーストアルバム。
ヒップホップを自己表現の手法として昇華させた彼からポエトリーに発せられる物語は、優しく、そして切ない。


「トーキョー難民」



2010

2010

クラムボンは進化する進化するまだ進化する。これほど多くの名曲を抱えたアーティストが、さらにクリエイティブな活動している例は、他に指を折るほどしか無いのではないか。
驚くべきことに、このアルバムも「クラムボンのベストアルバム」である。毎作毎作最高到達点に達する彼等が、活発に、そして地道に活動している事に感謝したい。


「tiny pride」



BREAKBOY

BREAKBOY

「ロック」と「クラブ」のジャンルの垣根はあらゆるで取り払われているけれども、ヒップホップは一つ孤立し続けていた状況。ヒップホップから一つのアプローチが提示された今作。
コミカルでも異端でもなく、直球で正統にヒップホップに土台を持った音楽を携えた彼が、「(ロック・ポップ)音楽好き」に手を差し出している。それに呼応する耳敏いリスナーがいる。一つの革命が始まっている。


「Break Boy in the Dream feat.七尾旅人



A journey to freedom

A journey to freedom

ジャケットの印象と相まって、音楽に物語性を感じてしまう一枚。構成自体は彼の過去のアルバムに近いものがあるけれども、音使いはよりポップに、より丁寧な音色に進化しており、物語へより深く没頭することができる。
聴いているだけで、ゲームをプレイしているような気になる素敵な一品。


album spot



Kimonos

Kimonos

ZAZEN BOYSやソロ活動にて向井秀徳が目指しだした方向性の一つが結実した。もしくは、ZAZEN BOYSが辿っていたかも知れない可能性の一つだ。
わずかな音数で、確実にそこに匂いを残す向井秀徳の音楽。LEO今井のボーカルの存在感と掛け合わされて、唯一無二のものとなった。深夜に眠るように聴きたい、大人のベッドタイムストーリーズ。


「Almost Human」



Life Goes On

Life Goes On

改めて三人体制になったアナログフィッシュの新作は、バンドの一つの到達点を迎えた傑作となった。少ない音で自らを表現できるバンドは本物だ。キャリアの長さに比べると(ドラムの休養もあったりで)遠回りしている印象のバンドだけれど、継続は確かにバンドの力となっていた。くるりが評価されて、アナログフィッシュが評価されないのは不思議だ。
本作、他にも良曲が収録されているけれども、「平行」が文句なく良い。


「平行」



NO ALBUM 無題

NO ALBUM 無題

四人体制のブッチャーズは前作で完成した。そして本作は熟し切ったアルバム。
実に狂おしく暑苦しい想いが詰まった一枚となっている。普通のバンドがファーストアルバムで失ってしまうこの情熱を、このバンドは23年目で「獲得」してしまった。
ブッチャーズは毎作毎作、「kocorono」という自らの名盤と比較される運命を背負ってしまっていたのだけれど、kocoronoとは違うアプローチでたどり着いた今作でその呪縛は解けたようだ。新生ブッチャーズの可能性に心躍る一枚。


「ocean」



以上10枚。