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インセプション

ダークナイト」「メメント」で有名なクリストファー・ノーラン監督の最新作。
主人公のコブは、眠っている相手の夢から潜在意識にダイブし、その相手のアイディアを盗み取る産業スパイ。そんな彼に巨大企業のトップから任務「インセプション」が課せられる。仲間達からは「不可能」「限りなく難しい」と言われたこの任務を彼は受諾、任務達成のためチームを結成し任務に挑むが、その任務中に、主人公の過去が複雑に絡み合ってくる……。



監督が大好き(「メメント」大好き)なので、この三連休の先行上映回を早速観に行った。

今作は「レオナルド・ディカプリオ」「渡辺謙」と役者側の日本でのネームバリューも高いので、日本でも相当の番宣を打たれている作品となっているけれど、中身は完全にノーランワールド。役者目当てで気軽に見に行ったカップルは面喰らった、というか意味が分からなかったんじゃないだろうか。

「相手の夢にダイブする」というのが、相手の潜在意識に自分の潜在意識を直結するようなイメージ。その夢の中で、色々な「能力者」が活躍する、というSFアクションの部分がこの映画の見所の一つ。夢の中なので何でもあり。力があれば何でも起こせる。その「何でもあり」が最高のCG(CGはほぼ使っていないらしい!!)、VFX技術で演出されている。ビル街が折れ曲がるシーン、無重力での戦いのシーンは圧巻。

また、「潜在意識=夢=空想の世界」の存在もテーマの一つ。この「世界」をネット社会と重ね合わせても面白いかもしれない。(そして次の瞬間すこし背筋が寒くなる、かもしれない)

そしてノーラン監督作品。肝はやはり複雑な脚本。主人公達は「現実」と「夢」を何度も何重も行き来するのだけれども、ストーリーが進むにつれてその構造がどんどん複雑になる。その構造、恐らく普通に説明されても理解が大変なんだけれども、かつ映画上ではそういった特別な世界への説明がほぼ為されない。
もちろん知る手掛かりは、作中の彼方此方にちりばめられているのだけれども、専門用語や潜在意識世界のルールを、その前後の文脈で理解しなければならないようなパターンが多い。映画は二時半もあるのにそんな説明すらする暇がない程、とにかくストーリーが詰まっているのだ(そして振り返ると二時間半、まるで無駄がない)。
つまり、SFアクションシーンは見所ではあるけれども、理解のため回転し続けた頭を休める時間にもなっている!すごい映画だ。

よく分からないシーンをよく分からないなりに覚えつつ、その記憶のかけらからストーリーを組み立てつつ、各登場人物の台詞を逃さず聞いて、脳で意味を咀嚼することが必要になる。なので、一度で理解するには相当の集中が必要。ストーリー上重要なことを早口で一度だけぱっと言ったりするので、ほとんど聞き取れなくても字幕と同時に英語を意識して聞いておくと良い。字幕見逃しちゃうと一文が丸々分からなくなったりするので。

そしてラストまでに伏線がきっちり回収されるのが、さすがノーラン監督。そしてラストの演出がまた上手い。ネタバレになるから書かないけれども、最後の1秒、一瞬まで唾を飲む。

あと小ネタ。
ディカプリオは味のある顔になってきたなあ。アイドルだったころの影はないけれども、ただ、良いなあ。
渡辺謙の役(サイトー)は豪快に金を使っていたけれども、日本人=金持ちってイメージがまだアメリカではあるってことなのかな?それにしても謙様は最後まで過剰に活躍しててハラハラした。謙様をあんなに応援したことこれまで無かったよ!
街(迷路)を設計する役割の登場人物の名前が「アリアドネ」でちょっとニヤリ。

レオナルド・ディカプリオ」「渡辺謙」というキーワードで観に行こうと思っている人は、一度気合いを入れ直した方が良い映画。あと「ダークナイト」ともちょっと毛色が違うかな。単純な大作ではないことに注意。
とにかく複雑なシナリオが好きな人にお勧めの映画。本屋で分厚いSF本やミステリ本を買っちゃう人にお勧めしたい。


「Pet」という三宅乱丈先生の漫画があるんだけれども、その漫画が好きな人には絶対お勧め。かなり世界構造が近い作品なので。
逆に、この映画が気に入った方はその漫画をお勧めしたい。