読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

悲報

理性が全く事実を受け入れようとしない。認めなくて良い理由を延々探していて、セカンド自分がビックリしている。今でも嘘である可能性を色々考えているし、嘘だと色々丸く収まるんだから多分嘘なんだろうとも思っている。種明かしを待っている。ドッキリの看板を待っている。今はもうそんなに感情的になっているわけではないんだけれども、「突然、精神に疾患が発生してしまって、ある一部の事実だけ曲解して受け入れてしまっている」というのが正しいのではないかとも思う。

しかし、そんなことはないのだろう。

初めて知ったのは、神戸のタワーレコードの試聴機に入っていた「アラモード」だった。「花屋の娘」を聴いて、即購入した。当時はナンバーガールの幻影を追っていた頃で、重厚なロック音楽以外は認めないスタンスだったのだけれども、そんなこだわりをぶち壊す、内面に衝動が走った一枚だった。このアルバムを聴き込み惚れ込み、次にタワーレコードに行った時に勿論「アラカルト」を買って、二枚合わせて聴き浸った。
ロディックなのに奇想天外な展開にとにかく驚いた。滅茶苦茶面白い音楽だと思ったし、内向的な歌詞も興味深かった(気持ちがシンクロしたのかもしれない)し、耳当りが良く中毒性もある。音程なんて気にしない荒削りなボーカルも魅力的だった。
初めて「年下のバンド」を評価したのもこの時だっただろうか。音楽に対する色々な固定観念を吹き飛ばされたバンドだった。今、ナンバーガールくるりスーパーカー等のフォロワーであるバンド達を素直に好きと言えるのも、このバンドの存在が大きい。

ファーストシングルの「桜の季節」は、職場の近くのCD屋で買った。ポイントを集中させるために滅多なことが無いとタワーレコード以外でCDを買わない主義なのだけれども、待ちきれずに、職場を抜け出して買ったのを憶えている。「桜の季節」は素晴らしい中毒曲だったなあ。当時からiTunesを導入していれば、確実に200再生は超えていただろう。シングルを延々ループしていた。風呂場で「桜の季節」を歌ってストレスを吹き飛ばすのが日課になっていた。それ以降のシングル「陽炎」「赤黄色の金木犀」「銀河」全て買った。シングルまで買ってしまう、珍しいバンドだった。
勿論アルバムも買った。ファーストアルバムは実に素晴らしい一枚だった。シングルは非常にシングルらしく表情を見せているけれども、他の曲はインディーズと変わらず挑戦的な展開の曲が含まれていた。「打上げ花火」「TOKYO MIDNIGHT」なんて、ファーストアルバムに入れたら駄目だよこんなウケない曲!もっと手堅くいくもんでしょ!と笑った。メジャーになったのにまるで丸く収まる気が無いんだなーと嬉しくなった。
次のアルバム「FAB FOX」も実に迷走感溢れる一枚で大好きだ。1曲目の「モノノケハカランダ」からいきなりもうぶっ壊れているし、シングル「銀河」はPVのダンスですら正気でなかった。しかしながら「虹」は真っ直ぐにポップに素晴らしく、三ツ矢サイダーのCMソングだったのではないかと記憶が操作される程だし、「ベースボールは終わらない」にはユニコーンの影響を感じるような優しいメロディを感じた。アルバムのごった煮感が凄い。才能がとりとめなく溢れていた。もう、色々収まらなかったんだろうな。

そしてまだまだ迷走は止まらない。「蒼い鳥/東京炎上」で、名バンドに不可欠な「シングルでしか聴けない名曲」「カップリングの名曲」を作ってしまったかと思うと、次の「Surfer King」では一転スカパラと組む。なんとまあ、軸がぶれ過ぎている。普通のバンドならその変化は三年五年かかるところだよそれ。全然一所に留まる気が無い。その突き抜ける心意気や、素晴らしい。
そして、その迷走、いや独走、いや独創が一つの終着点を迎えたアルバム「TEENAGER」。青春感溢れるそのアルバムからは、バンドの特徴であった毒気が抜けているけれども、それがこのバンドの成長であり、やっとこのバンドは「大人」になったんだなあと思った。やっと、後ろをちゃんと振り返ることができるようになったんだなあ。

しかし成人したのに、まだ止まらなかった。「CHRONICLE」は「TEENAGER」までの流れをぶった切るように力強いアルバムで、またもファンを裏切る。たった一年で即裏切る。
しかし、もうここうなったら裏切りを楽しんでこそなのだ。正直なところ、「TEENAGER」の流れを踏襲していたらアルバムを買わないでおこうと思っていたのだけれども、予想通り予想を裏切ってくれた。
試聴をしたときに裏切ってくれて安心した気持ちを今でも覚えている。ニヤっとした。良かった。まだまだ理解できないぞコイツら。Amazonの☆が少ないのもむしろ勲章だろう。
ふふーん。「全力で走れ 全力で走れ」か。「速度あげたら止まんない! 瞳孔開いてなおんない!」か。ニヤニヤしながら聴いた。

このバンドは誰にも勧められなかったな。○○みたいな曲って表現が全然通じないし、すぐに変な曲作るし、勧めて責任が取れる気がしなかった。
そんなバンドが人気が出ることにビックリしたし、ライブに行ったら若い子ばかりでまたビックリした。ああ、こういった音楽をちゃんと受け入れる人達が山程いる。年下ばっかり。ライブで大合唱。若いなー。しかし、こんなに素晴らしいことはない。

このバンドはユニコーンになると思っていた。ユニコーンのように長く愛される良い曲を作っていたし、音楽は迷走に迷走を続けていたけれども、つまらない曲はまるでなかった。全力で足掻いていた結果が滲み出るような音楽が、つまらない訳がないんだ。何枚もアルバムを作って、解散して、志村さんはきっとソロでも人気が出るだろうな、再結成して、楽しそうにライブをする姿があると思っていた。


そんな予想まで裏切らなくても良かったのに。

http://www.emimusic.jp/artist/fuji/new_win/fuhou.htm

フジファブリック」のボーカル・ギター、志村 正彦さんのご冥福をお祈りします。