イングロリアス・バスターズ

クエンティン・タランティーノ監督の2009年最新作。

一言で言うと、ナチスをぶっ殺す映画。

観に行くにあたって、予告編は見ない方が良いね。今始めて予告編を観たけれど駄目だ。タランティーノ監督の作品史上No.1とか、「タランティーノ×ブラッド・ピット」という触れ込みは不要。だって、作品史上No.1ってなると「レザボア・ドッグス」と「パルプ・フィクション」という名作との比較になっちゃうし、ブラッド・ピットはクレジット一番上だけれど、物語の中心ではないし。ブラッド・ピットの役よりヤバい、キツネみたいな役を演ってる方がいらっしゃるし。
タランティーノだから脚本や演出で魅せてくれるんだろうな!今度の作品こそ、○○超えしてくれるんだろうな!」と意気込むより、肩の力を抜いて気を抜きながら観るのが一番良いと思う。B級B級。映画館でも隣を気にせず笑いながら観たら良いよ。


さてこの映画、第二次世界大戦でドイツに占領されたフランスが舞台。ナチスに一撃を喰らわそうとする二組(復讐/奇襲)の計画や如何に?という概要。

タランティーノ作品の特徴である、込み入った脚本、クセのある登場人物達、殺戮グロ演出は相変らず。そして音楽の使い方がこれも相変らず上手い。上手いというかあざといというか。音楽一つで画面の雰囲気を変えてしまう、というお手本のような演出が次々と。
後は、相変わらずの長い会話演出。「ハリウッド映画」なら会話を削って120分にしちゃうだろうなあ、というところを皆長々とくっちゃべって152分。長いけれどあのグダグダハラハラする会話が良いんだよなー。緊張感を途切れさせない。
そして相変らず、無駄に印象的なシーンをざくっとゴミ箱に捨てるようなばっくり演出ね。もう突っ込みたい。声出して突っ込みたい。
恐らく難点?と捉えられそうなのがラストなんだけれども、あれはあれで意外。意外に意外じゃなかった、という意外。結局えええーっ?ってなっちゃって予想を裏切られたから、脚本の勝ちなのかもね。あまりネタバレしたくないのでここまで。

それにしても、ナチスユダヤ人虐殺に対する風潮と比較すると面白いなあ。
ナチスってやっぱり色々な映画で悪役として描かれるけれど、単純に分かり易く憎たらしい悪役としてしか描かれず、それを打倒する側の悲喜に重点が置かれることが多い。
一方この作品はナチス側の描写も手厚い。若干小馬鹿にしつつもナチス側のドラマも色々描いているため、ナチスを虐殺する光景に若干の嫌悪感も覚える。グロ描写も多いし。そう、これまでの戦争映画とは連合国とナチスの描かれる立場が逆なんだよな。ただ、立場が逆でこんな映画作ったら観る人減るだろうなあ。
結局これが戦争なんだよなあ。そんな戦争を映画館で笑いと共に観られるって平和だなあ、映画館を燃やすなんて話を映画館で安心して観ていられるなんて平和だなあ。ということをちょっと思った。ただ、深く考えるにはこの映画、フィクション丸出し過ぎるんだけれどね。


タランティーノの十八番連発。もうこれだけで十分満足。映画評が初期の作品より悪いから映画館に足を運ばないのは損。タランティーノ作品が好きならとりあえず行くべき。だって、平均点のタランティーノ映画なら、そりゃ観るでしょ。元は取れる。