集団行動 SUPER MUSIC TOUR -SUPER編-@心斎橋Music Club JANUS (2019.02.02)

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集団行動、今ライブを観ないと勿体ない。

前段

2019年2月2日に心斎橋Music Club JANUSにてDADARAYとのツーマンで開催された「SUPER MUSIC TOUR」のSUPER編に行ってきた。

集団行動のライブを初めて見たのは、1月の廃病院パーティーだった。旧体制の相対性理論進行方向別通行区分タルトタタンやハナエのプロデュースなどで真部さんの活動を追っかけていて、集団行動のアルバムもデビューから購入していたのだけれども、なかなか今までライブには足を運ぶ機会がなかった。今思い返すと、ライブを観ても音源以上の演奏はないだろうと決めつけてしまっていたのだと思う。心の中で旧相対性理論進行方向別通行区分などと比べてしまっていて、それら程は面白いことが起きなさそうだと、内心決めつけてしまっていた。

大きな間違いだった。絶対にもっと前から見ておくべきだったと1月のライブ後に後悔した。でも今更後悔してもどうにもならないので、せめてこれからは観に行こうと帰り道で誓ったことを覚えている。バンドの魅力に取りつかれてしまって、そもそも次のライブを観たくて観たくてどうしようもなくなったので、間がなく大阪で2月にライブがあったのは本当にラッキーだった。

Spotifyプレイリスト(未発表曲除く)

ライブ

会場の心斎橋JANUSは音が良いライブハウスで、しっかりしたバーカウンターがあるのはポイントが高い。入り口からステージまでゆとりのあるスペースが取られていて、観客としてストレスを感じることがない良い場所だと思う。

ホストである集団行動は二組目として登場。「集団行動の時間です」とのボーカル齋藤さんの宣言の後に、一曲目の「土星の環」が始まった。

1月に観たときも一曲目は土星の環だったと思う。イントロで力強く鳴り響く真部さんのギターに不意を打たれて、鳥肌が立つし背筋も伸びた。この曲、こんな色気のあるギターがイントロだったっけ? 力強くビートを刻む西浦さんのドラムと共に歌が始まり、コーラスに向けて力強く静かに演奏の密度が高まっていく。こんなにスケールの大きい曲だったっけ? 記憶の中にある曲と今ライブで演奏されている曲の違いに驚く。アルバムを聴き込んでいたつもりで、全然この楽曲の魅力を掴めていなかったことに気付かされた。一枚目のアルバム「集団行動」を聴いた時には、これからが期待できるバンドだなと思っていたけれど、実はもうすでに始まっていたバンドだったのだ。

それから「テレビジョン」(※未発表)「クライム・サスペンス」と、恐らく次のアルバムに収録される曲が続く。テレビジョンは旧相対性理論っぽい不思議感のある曲、クライム・サスペンスはリズミカルなヴァースが特徴的な曲だけれども、パートで齋藤さんが歌い方を変えるところが印象的だった。齋藤さんはフラットで静か、少し浮遊感のあるボーカルが特徴的だったけれども、最近の曲では表情を広げてきている。表情を広げやすい声質だった特徴が生きている。

そして新メンバーであるベースのミッチーの存在感が良い。ボーカルの齋藤さんの存在を支える柱が、真部さん西浦さんの他にもう一本増えて三本になったことで、バンドのバランスが安定したように感じられる。力強いバンド演奏が後ろにあることで、齋藤さんの歌声が遊ぶ余裕が生まれている。集団行動の可能性は、原石っぷりが半端ない齋藤さんの可能性にかかっていると思うけれども、ミッチーはその齋藤さんの可能性を広げる存在になっている。とても「ベース」らしい存在だ。

四曲目が最新曲の「ザ・クレーター」。

この1月末に配信されたこの時点での最新曲。真部さんの才能と集団行動の武器が妥協無く合わさって生まれた傑作だ。真部さんっぽい名曲、集団行動っぽい名曲はこれまでにもあったけれど、この曲は真部さんらしく、かつ集団行動が演奏してこその名曲だ。きっと次のアルバムが出た後には、メンバーは過去の肩書ではなく「集団行動」として語られるようになるだろうな、とこの曲を聴いて確信した。

そしてここでMCが挟まる。MCではどうやら齋藤さんは自分では喋らないコンセプトらしく、ベースのミッチーを口パクさせながら西浦さんがひたすら喋る。これが意外に長く続く。水分補給の休憩時間を作るための場つなぎかと思いきや、休憩できそうなある程度の時間が過ぎても終わることなく、ただひたすら笑わせてくる。毎回幕間ネタは練ってきているらしいけれども、この練り具合は異常だ。ホールツアー級。こういうのもライブに行かないと分からないものだ。

そんなMCの流れから、無言の齋藤さんが観客にクラップを求めながらの「充分未来」で演奏が再開される。充分未来はコーラスに入るときの緩やかな解放感が気持ち良く、そのムードを作る演奏力の高さを改めて感じる。

次に演奏された未発表曲の「スープのひみつ」は、また齋藤さんの歌声の幅を広げる、「みんなのうた」を狙えそうな一曲だ。新曲のジャンルはバラエティに富んでいる。ここから続けて演奏された既存曲はまた、音源とはかなり印象が違った。演奏にキレと色気があって飽きることがなく、それぞれの楽曲の新しい一面を感じさせてくれる。

二回目のMCを挟んでの未発表曲「セダン」は、これまで集団行動では演奏されなかったようなモータウン調の曲。新しいアルバムで集団行動の楽曲の幅を広げようとしているのがわかるし、それが成功しつつあるのも感じられる。齋藤さんの歌声の可能性が広がったことが大きい。

その次の「AED」もライブ演奏での変化に驚いた曲。齋藤さんが見せるクールな色気と真部さんのギターソロが印象的。一曲一曲、曲のムードを作るのが本当に上手く、それはバンド全員の演奏力が高いことの裏付けだと感じる。

そして「ティーチャー?」。

この曲、真部さんの才能がさく裂しまくっていませんか? 展開が早く、ライブで聴くと病みつきになってしまうタイプの曲。演奏力の高さと、齋藤さんの声質があってこその魅力がギュッと詰まっている。以前からライブでは演奏されていた曲らしく、配信されるまで知らなかったのが勿体なく感じる良曲だ。きっと新しいアルバムには収録される、と思う。

そこから代表曲「ホーミング・ユー」に続き、観客を煽りながらの「鳴りやまない」。齋藤さんの笑顔が本当に良くて盛り上がった。ここで本編が終了。

そしてアンコールからのMC。これがまた長い。全然終わらない。時間が押していると脇からスタッフに突っ込まれているのに全然終わらない。そのおかげで、齋藤さんを口パクさせながら喋る真部さんと、ミッチーを口パクさせながら喋る西浦さんの仲が滅茶苦茶良いのは腹一杯分かった。あと西浦さんが関西を愛しているのも分かった。「あまからアベニュー」を咄嗟に思い出せるのは関西人でも相当関西やで。

そんな長いMCから、ニューアルバムの表題曲である「SUPER MUSIC」。タイトル通り捻りなく、素直で力強いポップソング。そして聴いていてやたら楽しい。集団行動の王道を切り開こうとする直球だ。これまでの集団行動の曲調とは異なるけれど代表曲になるかもしれない強度があるし、もし代表曲になったのなら集団行動はステージが大きく上がると思う。これは勝負曲だ。

そして「モンド」「オシャカ」でライブは終了。この二曲の流れには何度も鳥肌が立った。「オシャカ」はもう本当に一度ライブで聴いて欲しい。音源以上にドラマチックだから。

もう圧倒的なスケールだった。抜群の存在感、でもまだ未完成の齋藤さんを支えるバンドメンバーの演奏力。スタートダッシュより成長力に賭けた分時間がかかったけど、伸びしろは想像以上に大きかった。ニューアルバムは旧相対性理論を期待している人にとっては期待外れかもしれない。ただ集団行動はそもそも旧相対性理論の焼き直しではないし、だからこそ世界征服に近付くことができているのだ。集団行動としての大きな未来を感じるライブだった。

新しいアルバムが出ると、ワンマンライブができる曲数が揃うことになる。もちろん次のライブのチケットは購入済だ。

セットリスト

  • 土星の環
  • テレビジョン(未発表)
  • クライム・サスペンス
  • ザ・クレーター
  • 充分未来
  • スープのひみつ(未発表)
  • 絶対零度
  • フロンティア
  • バイ・バイ・ブラックボード
  • セダン
  • AED
  • ティーチャー?
  • ホーミング・ユー
  • 鳴りやまない

~アンコール~

  • SUPER MUSIC(未発表)
  • モンド
  • オシャカ

2018年の良かった邦楽

toe/レイテストナンバー

2018年一番聴いた曲。無駄な味付けがないからこそ揺さぶられて、聴き続けられる。

KID FRESINO/Coincidence

KID FRESINO x Yasei Collective。めくるめく展開に呆然とした。全てがスキルフルなことでバランスが取れている、信じられない位に格好良い曲。

今夜だけ/卓球と旅人

相性がすごく良い二人だと思う。石野卓球七尾旅人の合作らしい真夜中の世界感。DEVILMAN crybabyをどうしても思い出してしまう。

生きろ。/水曜日のカンパネラ & yahyel

宇多田ヒカル/初恋

MEGURI/world's end girlfriend

サニーデイ・サービス/FUCK YOU音頭

POP TEAM EPIC/上坂すみれ

Sundance/D.A.N.

動物的/人間的/ORGE YOU ASSHOLE

アナログ収録のAlternate long ver.が良い。ライブのアレンジもすごく良くて、轟音の中で眠らされるような感覚がたまらん。大人の子守歌。

2018年の邦楽10枚

2018 年にリリースされた邦楽のアルバムから最高の10枚を選ぶ。今年で9年目。

選出基準

  • 邦楽のみ。国内で(も)活動するアーティストに絞る。
  • 1アーティスト1枚
  • コンピレーション盤は最大1枚。

七尾旅人/Stray Dogs

Stray Dogs

Stray Dogs

とても叙情的なアルバムで、このアルバムの素晴らしさを説明することはとても難しい。

何か特別に耳を惹く新規性があるわけもなく、上辺だけ聴いているといつもの七尾旅人のアルバムだなと思うかもしれない。ただ、アルバムを再生しているうちに、ふと耳に留まったフレーズから急に情景が広がっていき、世界に取り込まれていく瞬間がきっと誰にでもあるだろう。理屈では表現できないけれども、きっと皆そう感じるだろう、そういう確信がある。これはもう魔法としか思えない。

曽我部恵一/There is no place like Tokyo today!

2018年の曽我部さんはサニーデイ・サービスのアルバムから始まり、リミックスアルバム、ベストアルバムと立て続けにリリース、映画の劇伴、曽我部恵一名義でもヒップホップ(!)アルバムをリリースし、もうどれだけ音源出てくるねん状態だったのに、最後の最後に実に「アルバム」らしい最高品質のアルバム「There is no place like Tokyo today!」がリリースされたのには驚くしかない。

曽我部恵一」名義らしい、内向的で自由なサウンドが続く。2018年にリリースされたアルバムの中で、最も無計画だったのが本作だったと想像するけれども、だからこそ曽我部さんらしさを最も感じられるのかもしれない。

Silent Poets/dawn

dawn

dawn

ドコモのオリンピックCMソングの「東京」が5lack名義ではなくて「Silent Poets feat. 5lack」と知ったときの衝撃が懐かしい。実はSilent Poetsのことはすっかり忘れていたのだけれども、この「東京」の衝撃ですっかり記憶が戻ってしまったし、Silent Poetsが12年振りにアルバムをリリースしたと知ったときには、当然聴かなければならないと思った。何故か今聴くべき音楽のような気がした。

低いダブビートとストリングスを駆使するMassive Attackのフォロワーとしてのサウンドは12年前からの延長線なのだけれども、古びることは無い。特筆したいのはD.A.N.の櫻木さんをフィーチャーした「Simple」。12年前から続いていたサウンドと現在のサウンドが交わっていく感覚がたまらなく、ああ、D.A.N.と5lackがSilent Poetsを私の現在に引き戻してくれたのだなと思った。今聴いても普遍な音楽だし、きっと十年後もその時の音楽と共鳴するのだろう。

くるり/ソングライン

取り留めない楽曲の数々だけれども、それが不思議と統一感を保っているアルバム。きっとくるりのムードの一定さによってこの統一感が生まれているのだろう。もしくるりの他の曲がこのアルバムに収録されていたとしても、編曲され「ソングライン」らしい一曲となって収まるだろうなあと思う。充実期だ。

LEO IMAI/VLP

VLP

VLP

バンド「LEO IMAI」としてバンドサウンドを突き進んだ今作。ひたすらに格好良い重低音を鳴らせるバンドをLEO今井の楽曲が巧みに指揮している……というよりは、LEO今井の変態楽曲を安定して演奏できるバンドが完成した、と言うべきか。向井秀徳におけるZAZEN BOYSと同じようなものなのかもしれない。

低く鳴り響くベースとドラムの上で、煌びやかに駆け回るボーカル、ギター、キーボード。骨太のロックバンドサウンドなのに古臭く聞こえないのはLEO今井さんに華があるからなのだろう。

MASS OF THE FERMENTING DREGS/No New World

No New World [FLAKES-192]

No New World [FLAKES-192]

マスドレがやっと帰ってきた!駆け足で突っ走ってしまうマスドレが帰ってきた!

ここまで紆余曲折があった。メンバーが替わり、バンド休止しての宮本さんソロを経て、ちゃんとオルタナティブロックとポップとビートがにゅーんとアクアフレッシュしてるマスドレとしてシーンに戻ってこれたことが何よりも素晴らしい。歓びに満ちたアルバム。

Chara/Baby Bump

Baby Bump(初回限定盤)

Baby Bump(初回限定盤)

Dance Musicを名乗るためだけのビートではなく、床を鳴らしてDanceするためのビートが鳴っている。こんなにもCharaが最先端を突っ走っているとは知らなかった。

ただ何となく今が旬のアーティストをプロデューサーとして呼んできたわけではなく、解り合った上でCharaの楽曲として制作されているのが分かる、トラックとボーカルが抱き締め合っている楽曲群。世界に届くビートの上に乗っかっても、輝き続けるボーカルの存在感。先進性と完成度の高さに感服する。

cero/POLY LIFE MULTI SOUL

POLY LIFE MULTI SOUL (初回盤A)

POLY LIFE MULTI SOUL (初回盤A)

ここまで複雑なリズムとフレーズが連なっていて、それが整然としているわけではないのに「完成度が高い」と思えてしまうところが不思議。

ceroの魅力である、涼やかさと生々しさの融合はそのままに。ずば抜けた傑作だった三年前の「Obscure Ride」を上回る音楽へのアプローチが自然に行われていることに驚きを感じ……ていない自分に、驚く。最早レジェンドの域だ。

Luby Sparks/Luby Sparks

Luby Sparks

Luby Sparks

脈々と受け継がれる日本のシューゲイザーの系譜。その末裔がこのバンド……と言いたくなるところだけれど、音の空気感はむしろUKインディ。2018年版としてアップデートされたサウンドが日本を超えて支持されているのも納得。

長谷川白紙/草木萌動

草木萌動

草木萌動

大事件。美しさとしての高速ビートの上を緩やかに流れるボーカル。草木の芽生えを早回しで見ているかのよう。このバランス感覚は天性のもの。是非ともAphex Twinのように自由にやって欲しい。

過去の10枚

2017年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2017/12/31/140000

2016年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2016/12/25/090000

2015年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2016/01/02/184449

2014年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/2014/12/31/132004

2013年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20131231/1388501652

2012年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20130115/1358261719

2011年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20120118/1326889267

2010年の邦楽10枚

http://metaparadox.hatenablog.com/entry/20110411/1302534280